寒月〈寒の月〉4     200句

寒月や我ひとり行橋の音   太祇

作品
作者
掲載誌
掲載年月
寒の月光げに先導されて古希 加舎廣子 京鹿子 201201
月蝕に温もるごとく寒の月 齊藤實 201202
延々と流るる千曲川寒の月 浅野吉弘 201202
降りて来よ梢迷路を寒の月 松岡和子 201203
天帝の覗き窓なり寒の月 宮田香 201203
橋を這ふ貨物列車に寒の月 布川孝子 京鹿子 201204
寒の月すべての治療つくせしと 近藤きくえ 201205
寒の月眼ちぢまる沖のあり 熊川暁子 201205
決算を終えてテキーラ寒の月 鶴濱節子 始祖鳥 201206
病廊の慟哭を射る寒の月 頓所友枝 冬の金魚 201209
千年の欅の瘤や寒の月 藤井君江 馬醉木 201212
朗々と寒の月あげ法の山 竹貫示虹 京鹿子 201301
寒月のそば離れざる星一つ 荒井千瑳子 201301
寒月の刃物光や筑波山 布川直幸 201301
寒月に木星近く寄り添うて 岡野安雅 かさね 201302
寒月にたちまち着きしエレベーター 杉浦典子 火星 201303
寒月のゴンドラの様空に浮く 青木英林 かさね 201303
深しんと更けて寒月犬の吠 三枝邦光 ぐろっけ 201303
寒月やノブ磨かれて酒場の戸 小川滋 やぶれ傘 201303
寒月光木馬は失踪の構へ 千田百里 201303
良し悪しきくまなく照らす寒の月 小寺ふく子 六花 201304
寒月や姉の寝息のただしかり 西畑敦子 火星 201304
心字池寒月光の透徹す 高橋将夫 201304
寒月やロビーに吊す能衣裳 谷村幸子 201304
寒月や母はわが子も忘れたる 山田暢子 風土 201304
満潮の波間に揺るる寒の月 安斎久英 末黒野 201305
寒月へ大くつさめを飛ばしけり 橘正義 春燈 201305
寒月やこの世に濁りなきごとし 足立典子 雨月 201305
寒月に射貫かれし身の固まりぬ 湯川雅 ホトトギス 201306
寒月に白妙の富士峙てり 安原葉 ホトトギス 201306
山の温泉の真夜の厳寒月明り 宮崎正 ホトトギス 201306
寒月の細し俄に明けて来し 稲畑汀子 ホトトギス 201401
寒月であり朝月でありしかな 稲畑汀子 ホトトギス 201401
寒月の細し雲間を抜けしより 稲畑汀子 ホトトギス 201401
寒月や革靴の音跳ね返し 常田創 201401
氏神の手水の皺も寒の月 竹内弘子 あを 201402
手さぐりに廊下を伝ふ寒の月 竹内弘子 あを 201402
雲くぐるをりをり明る寒の月 林範昭 火星 201403
遠吠を打ち返したる寒月光 野坂民子 馬醉木 201403
迫る雲敵とはせずに寒の月 出口誠 六花 201403
美人画の眉にも似たり寒の月 国包澄子 201403
寒月や洞窟風呂のランプの灯 豊谷青峰 春燈 201403
寒月を愛でる二人の酔つ払ひ 仁平則子 201403
寒月光に罪はなかりし己が思惟 犬塚芳子 201403
赤提灯まで寒月を道連れに 山本喜朗 雨月 201403
雲の間にしばし憩うて寒の月 杉原ツタ子 201404
万物の息ひそめゐる寒の月 時澤藍 201404
寒月の上弦にして完璧に 半田稜 末黒野 201404
欅こそ武蔵の木なり寒月光 清水節子 馬醉木 201404
寒月や湯畑の湯気昇りゆく 中井登喜子 201404
湖の大き静寂や寒の月 大橋伊佐子 末黒野 201404
天心に尖る寒月阿蘇泊り 栗山恵子 雨月 201404
立て掛けし丸太を磨く寒月光 石田厚子 馬醉木 201405
流雲光らせ出づる寒の月 永田万年青 六花 201405
街の灯の賑はひをきく寒の月 河村啓花 ろんど 201405
寒月光はじめしろがね黄金色 熊谷ふみを ろんど 201405
寒月や更けて人なき京の路地 安原葉 ホトトギス 201406
寒月を仰ぎて鍵を探しをり 今井千鶴子 ホトトギス 201406
重ね摺る版画に塗り込む寒月光 石崎浄 風土 201411
初産の牛に手を貸す寒の月 曽根薫風 馬醉木 201412
寒月や地震の記憶の語部に 稲畑廣太郎 ホトトギス 201501
寒月に従ふ星のありしこと 稲畑汀子 ホトトギス 201501
寒月の円くならむとしてゐたり 山田六甲 六花 201502
寒月をよぎりし雲の透けてをり 永田万年青 六花 201503
モノクロームの絵に描き足さう寒の月 はしもと風里 201503
あをじろき一城泛ぶ寒の月 渡部良子 馬醉木 201503
さざなみの桟橋伸びる寒の月 庄司久美子 201503
絶巓にありて孤高の寒の月 高橋将夫 201503
大いなる寒月屋根に触れさうに 岡崎春菜 万象 201503
寒月のつかず離れず一輌車 松岡和子 201503
神将のまなこ鋭し寒の月 西郷慶子 201503
絶巓にありて孤高の寒の月 高橋将夫 201504
寒の月煌煌として地震の浜 松嶋一洋 201504
寒月の凛たり克己沸々たり 大村仍子 雨月 201504
寒月のため漆黒の空のあり 涌羅由美 ホトトギス 201505
山越しの風が耳削ぐ寒の月 黒滝志麻子 末黒野 201505
寒月光学舎に吹奏楽部の灯 田岡千章 201505
立ち枯れの木の吼えさうな寒の月 原友子 201505
寒月光灯のなき家を照らしけり 山田正子 201505
寒月を恃みお百度踏みにけり 山田夏子 雨月 201505
眼鏡拭き一日を終へる寒の月 丸井巴水 京鹿子 201505
寒月に傾ぎてピサの斜塔かな 山田佳乃 ホトトギス 201506
寒月や坂道長き影上る 松本文一郎 六花 201506
寒月や駅は一日の灯を落とす 布川孝子 京鹿子 201506
立ち枯れの木の呪えさうな寒の月 原友子 201506
やや寒の月食を見る身ごしらへ 稲畑汀子 ホトトギス 201510
天心に寒月蒼し百射射て 石崎和夫 201510
寒月の澄み渡る空ありにけり 稲畑汀子 ホトトギス 201601
寒月と存問したる富士孤高 稲畑廣太郎 ホトトギス 201601
旅終へし膝痛むなり寒の月 秋川泉 あを 201601
寒月や葷酒の入れぬ山門に 松本文一郎 六花 201602
寒月の香典袋照らしくる 松本文一郎 六花 201602
鉄削るミクロンの音寒の月 小林陽子 201603
石打てば罅割れさうな寒の月 宮井知英 201603
寒月や電子メールの受験票 中嶋陽子 風土 201603
恐竜の吼えたであらう寒の月 竹内タカミ 201604
寒月下コンクリートの象がゐる 正谷民夫 末黒野 201604
寒月に亀裂の高音トランペット 近藤喜子 201604
寒月やまばゆきまでに寺の屋根 宮西修一 万象 201605
万物へ澄みきつたる寒月光 甕秀麿 201605
寒月やときに刃となる言葉 湯川雅 ホトトギス 201606
ひたすらに輝き宵の寒の月 山田閨子 ホトトギス 201606
病む人へ寒月光のとどきけり 森俊人 201606
付添のベッドの軋み寒月光 荒井ハルエ 春燈 201612
寒月や天心細く残る朝 稲畑汀子 ホトトギス 201701
寒月や海峡統ぶる神の峰 河野由美 馬醉木 201701
寒月光抽斗多き母の部屋 大川ゆかり 201702
これ以上見透かさぬやう寒月光 高橋あさの 201702
寒月のこづゑを伝ひくる光 山田六甲 六花 201702
古町にのぼる寒月能登瓦 コ田千鶴子 馬醉木 201703
寒月光蛇の眠りに及びけり 井上菜摘子 京鹿子 201703
寒月光縦の葉先をさらに削ぎ 峰崎成規 201703
寒月や青き闇夜につきささり 大内マキ子 万象 201703
寒月に笑ひの目鼻つけやらむ 甕秀麿 201703
心の襞見すかされをり寒月夜 山崎靖子 201704
寒月光音遠ざかるハイヒール 川村亘子 末黒野 201704
寒月に濡れていよいよ白椿 飛高隆夫 万象 201704
寒月の仄かな明り神籤結ふ 勝木享子 万象 201704
寒月光棚田一枚一枚に 栗山恵子 雨月 201704
寒月や厳とし寂の南禅寺 岡村彩里 雨月 201704
寒月光地にあるものを美しく 隅田恵子 雨月 201705
黎明の寒月ひかり失はず 石黒興平 末黒野 201705
寒月や会ふことのなき人をふと 今橋眞理子 ホトトギス 201706
寒月の明るさに雲脱ぎし富士 安原葉 ホトトギス 201706
寒月や一人芝居の影躍る 中田禎子 201802
寒月の降る竹林や人の声 谷口律子 末黒野 201802
寒月や白き闇夜につきささり 大内マキ子 万象 201803
牛の背に寝藁投げ込む寒の月 大内マキ子 万象 201803
寒月下刀磨師の窓明かり 玉田瑞穗 万象 201803
寒月や玄関までの闇を行く 小山陽子 やぶれ傘 201803
空き箱に猫ゐる気配寒の月 藤井美晴 やぶれ傘 201803
寒月の水をつかめと甘えけり 山田六甲 六花 201804
寒月の水面に揺るる露天風呂 大森道生 春燈 201804
寒月蝕慙悸のいろとなりゆくも 上谷昌憲 201804
寒月を残し終バス発ちにけり 能美昌二郎 201804
寒月やタクシー待ちの長き列 菅野日出子 末黒野 201804
寒月の遠きへ妣を置きしまま 丸井巴水 京鹿子 201804
寒の月星よせつけず孤高なり 荻野周子 雨月 201804
中天にきりりと締る寒の月 延川笙子 六花 201804
寒月の真向ふ雲を駆けぬける 田尻勝子 六花 201804
寒月の南の窓に移りけり 笹村政子 六花 201804
杖の音響いてゐたる寒月光 永田万年青 六花 201805
寒月を見上げて一人帰りけり 永田万年青 六花 201805
寒月にトランクの音遠ざかる 永田万年青 六花 201805
天空をあまねく統べる寒の月 涌羅由美 ホトトギス 201806
寒月や風に乗り来る遠汽笛 田代貞香 201806
寒月の空へと帰る一羽かな 青木朋子 201808
寒月の澄めば空気の新しく 稲畑汀子 ホトトギス 201901
寒月に祈る心のありにけり 稲畑汀子 ホトトギス 201901
寒月の痩せゆくばかり旅にあり 稲畑汀子 ホトトギス 201901
修道院に寒月光のひたひたと 平野多聞 201902
寒月の白き光の突き刺さる 七郎衛門吉保 あを 201903
色白にならん寒月光まとふ 近藤喜子 201903
寒月を歪んで映す大正池 野口希代志 やぶれ傘 201904
暁の寒月光に打たれけり 志方章子 六花 201904
またしても通過電車や寒の月 豊谷ゆき江 春燈 201904
寒月や読み解きたりモーゼの書 安田優歌 京鹿子 201904
寒月や心のたがを締め直す 小山寿子 風土 201904
夫の待つ家路を照らす寒の月 鈴木石花 風土 201904
寒月や青き光に捕らはるる 江島照美 201904
真空に音は無きはず寒の月 三木亨 201904
大寺の屋根に閑かな寒の月 山田佳子 201904
寒月光名もなき城の闇深み 渡邉清央 春燈 201904
寒月やそこより空の裂けさうな 川崎真樹子 春燈 201904
寒月や遠い目をしてピアニスト はしもと風里 201904
二百年樫の裸身寒月光 太田沙良 201904
手の切れるほどの青さや寒の月 住田千代子 六花 201905
寒月光消息不明の眼鏡たち 陽山道子 船団 201906
パブ今もジュークボックス寒の月 田丸千種 ホトトギス 201906
家移り猫寒月を見つめをり 島田万紀子 馬醉木 202002
命惜しめと寒月光のメールかな 小嶋恵美 京鹿子 202002
屋根裏のロシア人形寒月光 火箱ひろ 202003
寒月をことりと置きて水鏡 大矢恒彦 202003
あちこちに沼のある地や寒の月 おーたえつこ 202003
寒月光振り返り見て人居らず. 吉清和代 202004
寒月や盃かはす老いの愚痴 高井修一 春燈 202004
寒月の空に濁りのなかりけり 加藤静江 末黒野 202004
寒月や心の紐を引き締める 岩月優美子 202004
銀鼠の高層ビルや寒の月 石黒興平 末黒野 202005
寒月や研ぎ澄まさるる心地して 片岡さかえ 末黒野 202005
寒月光ヒトの卵が分裂中 火箱ひろ 船団 202006
バス停にひとり降り立ち寒の月 石塚清文 やぶれ傘 202006
夢託す麒麟はいずこ寒の月 小笠原妙子 202006
寒月や犬屋のこゑを右に折れ 篠田大佳 あを 202012
寒月や披講を急かす咳払 篠田大佳 あを 202012
寒月の入りたる雲を出でにけり 笹村政子 六花 202103
寒月やははの指輪のかく拉げ 内藤静 風土 202104
寒月は二人で観ると温かい 平野多聞 202104
寒月や電池全力放電中 辻美奈子 202104
研ぎ上げし刃文のうねり寒の月 林徹也 202104
寒月を仰ぎて家路はるかなる 菅野日出子 末黒野 202104
寒月光鑿半ばなる小面打つ 武田未有 202104
あの「イエナ」在りし銀座や寒の月 小島昭夫 春燈 202105
寒月を仰ぎて家路はるかかな 菅野日出子 末黒野 202105
防人の立ちし海荒れ寒の月 宮元陽子 末黒野 202105
寒月や荒行堂に不開の門 柴ア英子 202105
山の端を離れ高きへ寒の月 石原健二 やぶれ傘 202105
魂を射られて痛し寒の月 岩村惠子 ホトトギス 202106
天地に響く静寂や寒の月 岩村惠子 ホトトギス 202106
寒の月皓々たるに祈ること 山田閏子 ホトトギス 202106
寒月 →5

 

2023年1月17日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。