火 事(他季を含む)     165句

火事跡の鉄瓶に蓋ありにけり    五十嵐研三

作品
作者
掲載誌
掲載年月
昼火事や四葩しづかに肥りつつ 岡本眸 199808
魚屋が水捨ててをり遠き火事 大橋俊彦 199810
昼火事のあとしんかんと青田照 岡本眸 199811
たんぽぽをすべて毟って大火事に 入江一月 船団 199811
一行の追伸となる火事見舞 稲畑汀子 ホトトギス 199812
戦災の記憶すなはち火事のこと 稲畑汀子 ホトトギス 199812
又思ひ出させて火事の話聞く 稲畑汀子 ホトトギス 199812
少し間の空いてしまひし火事見舞 稲畑汀子 ホトトギス 199812
火事の跡留めて地震のありし街 稲畑廣太郎 ホトトギス 199812
火事も又わが行く方であるらしく 稲畑汀子 ホトトギス 199812
火事迫る執着心を捨てるまで 稲畑汀子 ホトトギス 199812
山火事を見し幼き日消えざりし 稲畑汀子 ホトトギス 199812
野次馬の一人は遠く火事を見る 稲畑汀子 ホトトギス 199812
遠火事を夢のつづきのやうに見る 林菊枝 199901
火事跡の貼紙にある遠い町 林菊枝 199901
春山火事紅騎兵の酒乱のよう 高桑聡 船団 199903
団扇手に火事通報の手柄顔 村井久美子 199908
遠くある限り美し夜の火事 折原あきの 船団 199908
遠火事のごとき火宅と思ひたし 広渡敬雄 遠賀川 199909
五月の夜火事に潰えし村歌舞伎 村田近子 遠嶺 199909
遠火事に深き酔ひ寝の起さるる 能村登四郎 芒種 199911
山火事の消え際といふ来合せり 能村登四郎 芒種 199911
火事やみしといふ人声の帰りくる 能村登四郎 芒種 199911
火事見舞ふかぶか頭重るるのみ 大橋敦子 雨月 200002
火事見舞言の葉声にならざりき 大橋敦子 雨月 200002
遠火事や抽斗勢ひよく出でて 山田三江子 200002
郷愁に似て遠火事を眺めけり 林翔 200002
船火事のまはりの水の怠けをり 中原道夫 銀化 200003
春昼や遠くの火事をじっと見る 三宅やよい 玩具帳 200004
そのかみのウサギ当番火事出しぬ 塩見恵介 虹の種 200005
人生の通りすがりの昼の火事 渡辺鮎太 銀化 200005
人妻の寝巻に触れて火事へ急ぐ 阿部寒林 200010
火事の跡地球儀ひとつ転がれり 竹内弘子 あを 200101
火事跡の厠のあたりかと思ふ 土井田晩聖 銀化 200104
火事あとの灰片寄せて春の雨 鈴木とおる 風土 200104
火事あとを日だまり育つ花あんず 峯尾文世 銀化 200105
火事出せし窓くろぐろと雑居ビル 土橋柚花 船団 200106
昼火事に似てあの東千代之助 横倉由紀 船団 200107
今思へば皆遠火事のごとくなり 能村登四郎 200108
炎昼の火事を見ている一人なり 岩佐光雄 海程 200111
火事を見て寝つけぬ夜となりにけり 稲畑汀子 ホトトギス 200212
火事怖れ火を焚くことを怖れざる 稲畑汀子 ホトトギス 200212
火事場跡子供自転車並べらる 山遊亭金太郎 百鳥 200302
夜の火事をいましめ過ぐる低きこゑ 伊藤白潮 200302
日が射して夜火事の跡の霜柱 吉田康子 青山椒 200303
七十歳ななじふに門限のあり火事馬穴 小原禎子 銀化 200303
闇降りる火事に映えたる人の顔 森脇多恵子 帆船 200303
遠火事やごはん堅めに炊き上がる 渡辺知美 銀化 200303
山々の眠り覚ましぬ村の火事 大堀鶴侶 雨月 200303
遠火事のじわりじわりときな臭し 北尾章郎 200304
大川の闇けものめく火事の旬 八田木枯 晩紅 200307
慄へつつ真昼の火事を見てをりし 西山美枝子 酸漿 200402
初霜や火事跡といふ黒きもの 鷹羽狩行 200402
遠火事や靴穿きかけて又脱いで 林翔 200402
島の火事海水使えず燃えさかる 永野秀峰 ぐろっけ 200403
声にしてみるのみのこと遠火事は 高倉和子 200403
火事現場見知らぬ人と話する 秋千晴 200405
かき抱き共に泣きたる火事見舞 河野美奇 ホトトギス 200405
山火事を美しと見て言はずをり 今井千鶴子 ホトトギス 200405
火事跡に残る無髭のイエス像 首藤知茂 200405
消火器の重さ気になる火事遠し 舟橋千枝子 八千草 200407
荒淫か火事のありたるひる下り 八田木枯 夜さり 200409
迎え討つ火の放たれし夏の火事 坂井法 200409
風荒き夜の火事と聞くばかりかな 稲畑汀子 ホトトギス 200412
山火事を見て寝つかれぬ夜となりし 稲畑汀子 ホトトギス 200412
美容液たたきをり火事遠ざかる 竹内弘子 あを 200412
火事遠きこと確かめて寝ることに 稲畑汀子 ホトトギス 200412
火事跡に立つ柿の木や冬の月 大坪景章 万象 200503
夕火事に気丈な女将見舞ひけり 磯野しをり 雨月 200503
心細くなりたる夜の遠火事は 高倉和子 200503
遠火事や二重瞼の猿のボス 霧野萬地郎 200504
友住める町の名告ぐる遠夜火事 星加克己 ぐろっけ 200504
葉桜がざわざわ遠い火事が見え 田中藤穂 あを 200507
火事跡に炎に堪えし梅開く 三浦澄江 ぐろっけ 200507
火事二件花見日和の明日香村 河合佳代子 栴檀 200507
夜半の火事筍流しにあふらるる 菊池ゆう子 200507
ひとり居の寢端をおそふ火事喧嘩 吉弘恭子 あを 200601
冷まじやきのふの火事の話など 生方ふよう 200601
火事あとの木の間に見ゆる雪嶺かな 三関浩舟 栴檀 200605
にぎり飯火事場に届く遅日かな 内田郁代 万象 200606
花菜畑どこか遠くに昼の火事 佐藤郭子 200607
遠火事や薔薇のかたちの角砂糖 辻直美 200611
昼火事を収め正午の時報かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200611
遠火事のありしガラスに指の跡 山尾玉藻 火星 200702
遠火事や何ゆゑ把手濡れてをる 横山淑子 200702
遠火事や可もなく不可もなき暮し 藤井昌治 200702
遠くより火事場照明されてをり 島田千晶子 200703
子へ火事を知らせる電話声詰る 島田千晶子 200703
火事の雲遠き日を追ふ目差しに 水野恒彦 200703
火事見舞に火の粉を浴びて嫁の来る 島田千晶子 200703
夜の明けて死者二人出し火事と知る 島田千晶子 200703
車椅子燻ぶる火事場一夜明け 今井忍 ぐろっけ 200706
銀座秋ヘリ旋回す火事騒動 東亜未 あを 200712
遠き火事人傷つけしことふいに 井上菜摘子 京鹿子 200801
火事に消ゆ昨日寄りたる峠茶屋 小林雪雄 200801
昨日火事ありて新丸ビルの黙 稲畑廣太郎 ホトトギス 200802
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ 坪内稔典 稔典句集 200804
遠火事のなほ夜を焦がす北の町 相沢有里子 風土 200805
火事跡に棟上げ近し柿若葉 長田秋男 酸漿 200807
火事跡の木の枝に懸け梅雨の傘 藤田宏 長城 200808
この匂ひあれやつぱ火事やつたんや 稲畑廣太郎 ホトトギス 200901
昼火事やヘリコプターと野次馬と 石原みどり 炎環 200901
傘ひらく傘にぶつかり火事を見る 丹沢亜郎 炎環 200902
界隈の火事朝刊に詳らか 田村園子 200903
遠火事に秒針光るある角度 定梶じょう あを 200903
半鐘の鳴る朝火事や旅の宿 大塚洋子 酸漿 200904
唇のざらつき火事の騒ぎ止み 泉田秋硯 200904
幼子の命尊し火事多発 金井香ル 200904
山火事のひろがりゐたる春の闇 木野本加寿江 火星 200907
火事跡のひるがほに風ありにけり 根本ひろ子 火星 200909
火事跡の露な間取り見て通る 成宮紀代子 201003
長靴に火事の名残や消防団 苑実耶 201003
火事消えて天の星々よみがへる 定梶じょう あを 201004
下校時のばらばら走る昼の火事 竹内弘子 あを 201004
山火事の勢を止める術のなく 涌羅由美 ホトトギス 201005
火事跡の緊張解けしホースかな 涌羅由美 ホトトギス 201005
千年の歴史丸呑み寺の火事 涌羅由美 ホトトギス 201005
火事跡の鍋を返してをりにけり 山田六甲 六花 201102
真向ひの大火事に窓震へたり 秋千晴 201203
火事近しつつじの冬芽呼びおこす 久保東海司 201204
火事跡に蓋開いてゐる魔法瓶 林昭太郎 あまねく 201210
サイレンがサイレンを追ふ夜の火事 戸栗末廣 201212
風呂敷に結飯をつゝみ火事見舞 瀧澤伊代次 伊代次句集 201212
火事ありし二日の空の崩れそむ 山田六甲 六花 201301
遠くとも近くに見ゆる真夜の火事 岡野安雅 かさね 201302
火事見ゆる橋の人出となりにけり 山尾玉藻 火星 201302
遠火事と思へど闇の音を追ふ 成宮紀代子 201303
遠火事のひよろりと煙立ちしのみ 柴田佐知子 201303
夜汽車から見える遠火事篝ほど 宇都宮敦子 201303
最晩年身を焼く火事も思し召し 平川陽三 船団 201306
冴返る縄文遺跡に火事の跡 山路紀子 風土 201306
火事跡を炎天となり灼けつくす 阿部寒林 あを 201308
空家より火事の警報パトカー来 水野範子 ぐろっけ 201310
夜火事見し列車に傘を忘れたり 中田みなみ 201401
昼火事にしばし歯科医は手を止めて 粟倉昌子 201404
三日三晩の山火事治む春時雨 鈴木石花 風土 201407
涼風にそぐはぬ騒ぎ団地火事 伴秋草 末黒野 201412
カナリアに遠き昼火事ありにけり 山尾玉藻 火星 201501
火事跡に残る床屋の大鏡 菅谷たけし 201503
「月に吠える」闇なまめかし火事明り 辻久々 船団 201505
畦道に火事の始末の消防車 田中臥石 末黒野 201505
火事鎮火折から春の月上がり 定梶じょう あを 201505
夏火事を見舞ひ立寄る芭蕉句碑 城詰操 万象 201509
気忙しい火事のサイレン三の酉 岡山敦子 京鹿子 201604
真向ひの火事に妊婦を庇ひたり 秋千晴 201606
真つ先に屋号を外す火事騒ぎ 秋千晴 201606
火事の跡ひそひそ話固まれり 秋千晴 201606
火事見舞上り框に腰かけて 吉田葎 201704
火事跡の静寂を雫して蛇口 林昭太郎 201704
留守電に残りしままの火事見舞 松田明子 201705
禁制に触れたるやうに夜火事見し 吉田悦子 201706
一村の遠火事に似て大夕焼 渡辺絹代 末黒野 201708
三の酉水といふ字の火事封じ 田丸千種 ホトトギス 201803
火事跡と思へぬ気負ひ柿若葉 前田美恵子 201808
いささかの草が残れる火事の跡 藤井美晴 やぶれ傘 201903
立ち読みのどこかで火事があるらしい 火箱ひろ 201903
数へ日の三面記事の街の火事 塚本虚舟 やぶれ傘 201904
車列渋滞静かに解くる火事のあと 田中とし江 202010
辺りより更に冷たき火事の跡 柴田佐知子 202102
火事の夜はどこかあやしき匂ひ持つ 三宅文子 春燈 202103
春北風LAに似る山の火事 七郎衛門吉保 あを 202105
山火事とコロナの話春炬燵 湯本実 やぶれ傘 202105
おととしの火事の空地に春じをん 森なほ子 あを 202107
ぞろぞろと人の集まる昼の火事 戸栗末廣 202108
切り傷の指が脈打つ夜の火事 高倉和子 202206

 

22/12/13 制作

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

掲載年月順です。

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