冬深し     182句

冬深しひかりを組みて枝と幹   高島茂   冬日

作品
作者
掲載誌
掲載年月
冬深みボルシチに塩足しにけり 細井隆子 199903
冬深し急ぐを常の靴音も 岡本眸 199904
冬深し頭を揉む十指髪に入れ 岡本眸 199907
人ただに過ぎて日向の冬深む 岡本眸 200002
冬深む長きわが影連れもして 保坂加津夫 いろり 200002
み仏の裾ゆるやかに冬深む 小島美智子 風土 200003
冬深く星のきれいな九十九里 水田清子 200003
小指から土になる音冬深し わたなべじゅんこ 鳥になる 200003
見上ぐれば伐折羅一喝冬深む 辻井桂子 雲の峰 200003
冬深し猫の寝てゐる巫女溜り 西村純一 雲の峰 200003
日ぐれ来て止めどなく冬深めけり 橋場千舟 船団 200007
闇ひとつ靴音一つ冬深む 林裕子 風土 200102
冬深し山の音する生き柱 吉永すみれ 風土 200103
冬深む街を荒野と思ひけり 重高涌子 遠嶺 200104
冬深し遠くを見つめる「永遠の仔」 鈴木ひさし 船団 200105
老人とふくら雀に冬深む 村越化石 200202
街燈の下に句を書き冬深む 戸田喜久子 200202
冬深む大樹の四手をあたらしく 山田三江子 200203
おもかげにたぐるえにしや冬深む 渡辺立男 馬醉木 200203
番犬にもののふの相冬深し 名取光恵 百鳥 200203
冬深む北へ発ちたる無蓋貨車 黒田政男 春耕 200203
鉄路わかれ又岐れ冬深むべく 岡本眸 200203
唐崎の松と対峙す冬深き 中林京子 雨月 200204
きざはしに維新の軋み冬深し 川野喜代子 雲の峰 200204
吊橋の閉ざされて冬ふかめけり 長沼紫紅 200204
内濠を二重に津軽冬深む 小林輝子 風土 200303
冬ふかく朱色に灯る地下の駅 那須淳男 馬醉木 200303
冬ふかく駅のトイレの大理石 那須淳男 馬醉木 200303
離島の灯さらに遠のき冬深む 新田巣鳩 馬醉木 200303
本流に向く松の幹冬深し 水野恒彦 200304
冬深し病めば戸惑ふことばかり 生方ふよう 200305
曳く舟と曳かるる舟と冬深し 中村房枝 六花 200312
小流れに耳寄せて冬深めけり 佐々木幸 200401
冬深む高層ビルと船泊り 清水喜造 帆船 200402
老の身の老を養ひ冬深む 村越化石 200402
廃村に碑一つ冬深む 宮原國夫 雲の峰 200402
冬深し夫の横がほ老いにしと 仙入麻紀江 草の花 200403
家居の日外出の日冬深むなり 真保喜代子 200405
火と水に近き妻の座冬深む 青山悠 200405
干魚の身の裏表冬深む 菅原末野 風土 200501
わが机上雑然と冬深むなり 岡本眸 200501
小雨降りあたり静かに冬深む 芝宮須磨子 あを 200502
堂縁に座禅の男冬深む 庄野房女 築港 200502
どこに佇ちても海の青くて冬ふかむ 長沼紫紅 200502
砂時計の砂落つるごと冬深む 菅原健一 200503
盛り塩の崩るる行場冬深し 原茂美 雲の峰 200503
わが胸にふと潮の香が冬深む 長沼紫紅 200503
十日ほど用のなければ冬深む 青山丈 200503
貝を煮るにほひに運河冬ふかむ 仲村青彦 200503
冬ふかむ老ふかむポッペン吹きにけり 橋爪隆 春燈 200503
蒸気時計噴き出して冬深みゆく 佐々木幸 200504
冬深し脱ぎすてし靴の朝は穿く 瀧春一 菜園 200509
納屋うらに鶏鳴ひとつ冬深む 能村研三 研三句集 200512
ペン立ての鉛筆尖り冬深し 山崎祐子 栴檀 200603
母の木と向き合ふてゐて冬深し 水野恒彦 200605
傍線の声なき教へ冬深む 長井順子 200605
巻脚絆解く宵毎に冬深む 瀧春一 常念 200606
冬ふかく鞍馬百戸の煤けをり 森ひろ 馬醉木 200702
白すぎる人形の顔冬深し 山田暢子 風土 200702
冬深し買ふはまぐりの石の音 山本耀子 火星 200703
冬深む悔いは悔いとし厨ごと 松井ふみ 風土 200703
冬深む古墳に色を閉ぢこめて 柴田佐知子 200703
俳諧の犀畏みて冬深し 本多俊子 200704
東北線のレールの継目冬深し 鈴木榮子 春燈 200704
鯉池の魚藍観音冬深し 松林順子 雨月 200704
冬深し日々好日の飾り皿 四條進 200802
冬深む思ひふかまるごとくにも 岡本眸 200802
冬深しおのが双掌を撫し重ね 岡本眸 200802
読みながら捨つる紙屑冬深む 野路斉子 200802
金毘羅の長き回廊冬深む 生田恵美子 風土 200803
冬深し粥好物の八十路夫 植村よし子 雨月 200803
真砂女なき卯波戸を閉ぢ冬深む 堀田こう 雨月 200803
冬深し英治の手紙母案ず 宇佐美ゆき 酸漿 200805
冬深く引き返すため渡る橋 火箱游歩 船団 200806
冬深しきのふの崖の今日も立ち 長城 藤田宏 200808
冬深む歯ごたへ程の余生とも 松田都青 京鹿子 200901
湧水に無言の響き冬深む 永峰久比古 馬醉木 200902

 回天記念館

絶筆の求婚の文冬深き

刈米育子 200903
冬深しスープに野菜いろいろと 倉持梨恵 200903
冬深む赤子を回し抱きしては 荒井千佐代 200903
玉葱の芯のさみどり冬深し 林昭太郎 200903
流れつく浮標に韓語冬深む 井原美鳥 200903
冬深し調剤用の匙くもり 井口淳子 200904
係船の喰るエンジン冬深し 吉沢陽子 200904
改修の床の漆黒冬深む 加藤峰子 200904
冬深き林檎の温度に手を当てる 藤本る衣 炎環 200904
帆柱の並ぶ浦曲も冬深む 飯田角子 酸漿 200904
古民家の床の軋みも冬深し 塚越美知子 200905
冬深し黒き血の立つ試験管 星原悦子 200908
冬深む父の帽子の苔のいろ 遠山みち子 201002
冬深む句碑建つ寺の山日差し 小澤克己 遠嶺 201002
冬深し赤きワインの湯に浸る 城戸愛子 酸奬 201002
能笛の一と吹きに冬深みけり 荒井千佐代 201003
冬深む音楽寺に日の匂ひ 林いづみ 風土 201003
山裾に舟屋収めて冬深む 矢野百合子 201004
倒木の幹の手触り冬深し 高田令子 201004
冬深し祝意のごとく泥鰌浮く 加藤峰子 201004
ニュース速報の電光板や冬深し 豊谷青峰 春燈 201004
冬深き山の端に落つ昼の月 斉藤雅子 末黒野 201004
夫の衿直す母ゐて冬深し 井上真江 酸漿 201004
冬深き故人の山よ蜜柑熟れ 永田二三子 酸漿 201005
来し方を飛び石として冬深く 堀内一郎 あを 201101
み仏のてのひら厚く冬深む 本多游子 春燈 201102
冬深し句座の半ばのカプチーノ 伊東和子 201103
十三回忌独り暮しの冬深し 刈米育子 201103
子と違ふ旅を終へたる冬深し 井上信子 201103
作務小屋に残る木の香や冬深む 大竹淑子 風土 201104
先生の文読んでゐる冬深し 萩原すみ 春燈 201105
老杉にのこる蛇巻や冬深く 田下宮子 201202
突堤に時化の荒波冬深し 佐津のぼる 六花 201202
妻の背もいささか丸し冬深む 浅井吉雄慈 夕端居 201203
冬深し目覚めては炊く白き飯 井上信子 201204
矢河原の渡しの跡や冬深し 佐藤喜仙 かさね 201205
冬深し口の詰まりし醤油差し 鳳蛮華 201205
江戸仕込み落し噺や冬深し 太田健嗣 ぐろっけ 201207
降る雨の身にともし火を冬深む 四條進 201301
みちのくの復興遅々と冬深む 国包澄子 201302
冬深し松の緑もくすみけり 佐藤喜仙 かさね 201303
冬深し宅配食を予約すと 田原陽子 201303
まだ確と二人三脚冬深し 牧野慶 ろんど 201303
焼き加減レアにしてくれ冬深み 定梶じょう あを 201303
倚りかかる椅子の軋みや冬深む 佐々木紗知 京鹿子 201304
冬深しひとつの疲れのみならず 松田泰子 末黒野 201304
毀般つ家に残る浴槽冬深む 頓所友枝 201402
縁談を掃き清め待つ冬深む 中井登喜子 201403
風音か木々の寝息か冬深む 小倉正穂 末黒野 201403
目礼にこたふ黙礼冬深し 秋葉雅治 201403
冬深む波のとどかぬ波ごろし 宮内とし子 201403
シュレッダー満杯にして冬深む 山本みち子 201403
老々の隣家音なく冬深し 安立公彦 春燈 201403
鉛筆の芯のB4冬深く 定梶じょう あを 201404
樅の木は杜に古く冬深む 渡邉孝彦 やぶれ傘 201404
清方の口絵の美人画冬深む 仙田孝子 風土 201404
冬深し豆ぐつぐつと煮つめをり 佐々木よし子 201404
影と影支ふる木立冬深む 服部早苗 201405
目礼にこたふ黙礼冬深し 秋葉雅治 201501
冬深し江戸世のままの割烹舗 鷲見たえ子 201502
喉元のダイヤモンドや冬深む おーたえつこ 201503
聖堂の木椅子直角冬深む 宮内とし子 201503
冬深む五百羅漢の肋骨 小林和代 201504
服薬の多きに慣れて冬深む 西村梛子 馬醉木 201602
貝殻のうたた砂へと冬深し 深川淑枝 201603
冬深む隣りの椅子に鞄置き 大崎紀夫 やぶれ傘 201603
冬深しうみたてたまごひいふうみい 辻響子 201603
陵の森の青さや冬深し 森俊人 201604
洋館の鐘のくぐもる冬深し 高田令子 201604
雲早き真鶴岬冬深し 吉田きみえ 末黒野 201605
冬深く始発電車の燈り射す 布川孝子 京鹿子 201606
聖堂の祈りの鐘や冬深し 鶴岡紀代 春燈 201702
若冲の壁画の余白冬深し 山口順子 馬醉木 201703
波よりも雲の真白や冬深み 安斎久英 末黒野 201703
テーブルに灯るキャンドル冬深し 高田令子 201704
亡き夫のみがきし柱冬深し 柴田志津子 201703
どの部屋にも老眼鏡置き冬深む 窪みち子 201703
面影のいつしか遠く冬深む 佐藤信子 春燈 201704
打菓子のぼそとくづれて冬深し 久保久子 春燈 201704
煮崩れの魚の粗や冬深む 小倉陶女 春燈 201704
石といふ石みな羅漢冬深む 大沢美知 201801
嶺岡山に落つる夕日や冬深む 鶴岡紀代 春燈 201802
冬深みつまづくものの多かりし 大坪景章 万象 201802
仕込蔵の櫂干されあり冬深し 平田はつみ 馬醉木 201802
注射器にわが血が吸はれ冬深む 上谷昌憲 201802
冬深くホテル時間はゆっくりと 火箱ひろ 201803
冬深し振り向けば日の去りゆける 田尻勝子 六花 201803
冬深む盛塩のこの汚れやう 辻水音 201803
颯爽と破れジーンズ冬深む おーたえつこ 201803
オレンジピール口に香りて冬深む 火箱ひろ 201803
冬深む空に根を張る木のかたち 橋本榮治 馬醉木 201804
再びの噴火の報や冬深し 榊山智恵 末黒野 201805
冬深む眠る力の戻りつつ 岡部名保子 馬醉木 201901
冬深む川の流れに浮くあぶく 天野美登里 やぶれ傘 201903
山影を映せる湖や冬深む 安斎久英 末黒野 201903
冬深しなにかにつけて母思ひ 西岡啓子 春燈 201904
足弱の夫の後や冬深み 高橋泰子 末黒野 201904
岩壁に波のレシーブ冬深し 安斎久英 末黒野 201904
波音は海に還りぬ冬深く 能美昌二郎 201904
本棚を乱す絵本や冬深む はしもと風里 201904
冬深く半木神社の深き闇 波戸辺のばら 201904
平成の残日数へ冬深し 堀井英子 雨月 201905
比叡路のくぼみの夕陽冬深む 北川孝子 京鹿子 202002
冬深むこんがり焦がしおあげさん 辻水音 202003
一葉忌波郷忌と冬深みゆく 山内宏子 202003
溜め水のかたまりゆきて冬深む 柴田靖子 202003
古いピアノしずかに拭いて冬深む おーたえつこ 202003
ティーカップの螺旋の取っ手冬深む 波戸辺のばら 202003
冬深む鯉は底ひの阿字ヶ池 岡野里子 末黒野 202004
首洗ひ井戸ありて野の冬深し 深川淑枝 202005
天井まで積まれし古書や冬深し 広瀬済 やぶれ傘 202006
不倒翁おきあがりこほし机に冬深む 服部早苗 202006
冬深し湯屋の隣りに生薬屋 中田みなみ 202102
色変へて冬深みゆく雑木山 向井芳子 春燈 202103
玻璃窓の朝の気に覚め冬深し 臼居澄子 末黒野 202103
冬深し外堀といふ迅き流れ 半谷洋子 202103
冬深しまるく眠れば母の夢 兒玉充代 202105
ピアノ無き部屋の楽譜や冬深み 毛利直子 末黒野 202203
冬深しやはらかき日を浴びよ樹々 山岸明子 202204

 

2023年1月22日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。