踏絵(絵踏)       120句

罰よりも罪おそろしき絵踏かな    野見山朱鳥

作品
作者
掲載誌
掲載年月

グレゴリアンチャント絵踏の頃をふと

稲畑廣太郎 ホトトギス 199902
手鏡は天蓋寫す踏繪かな 中原道夫 銀化 199905
踏絵帳に紙魚走せてみな無苗の名 丸山海道 京鹿子 199907
祭壇の聖なるものとして踏絵 稲畑廣太郎 廣太郎句集 199912
絵踏せし心信仰失はず 稲畑廣太郎 廣太郎句集 199912
生業にいくたび絵踏せしことや 能村研三 200004
鰐の眼の過ぎてゆきたる踏絵かな 延広禎一 200005
踏絵かな洞の潮引いてをる 栗栖恵通子 200006
踏絵見し目に南ミの海碧き 栗山恵子 雨月 200101
絵踏されしマリアに触れて信徒なる 堀田政弘 200102
マリア像踏絵をしのび仰ぎをり 安達実生子 馬酔木 200107
踏絵以後足裏をせめるもののなく 田渕昌子 京鹿子 200201
妹に紅さしてゆく絵踏かな 岡田万壽美 雲の峰 200205
レプリカといへど踏絵の身に入みて 桑田青虎 ホトトギス 200207
踏絵ふまざれば獄門ふめば地獄 岩岡中正 ホトトギス 200207
踏めと主の言ひたまひたる踏絵かな 岩岡中正 ホトトギス 200207
踏絵見る媼のなむあみだぶつかな 立石萌木 雨月 200207
絵踏せし世は今とどう違ふのか 稲畑廣太郎 ホトトギス 200302
雨を来て人のひしめく踏絵展 折橋綾子 200305
にはたづみ踏絵の残る寺といふ 谷上佳那 百鳥 200305
鋭角に夕日射し込む踏絵かな 高倉和子 200306
絵踏せしむかし石抱き百叩き 竹内弘子 あを 200306
青竹を踏んで絵踏みの世を思ふ 杉良介 200402
天草五橋絵踏のごとく渡りけり 齋藤實 200404
船笛の谺花魁絵踏の日 築城京 馬醉木 200502
西坂の丘にうすれし踏絵板 長谷川通子 雲の峰 200504
絵踏せし人の子孫といふ司教 稲畑廣太郎 ホトトギス 200602
絵踏せし人に奉行の安堵顔 稲畑廣太郎 ホトトギス 200602
陽の落ちてハライソ遠き踏絵かな 松田有伽 河鹿 200605
絵踏するなら白潮の御前に 高橋澄子 200706
飾られし踏絵の叫びありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200708
己が句を師に問ふ絵踏ごころかな 生方ふよう 200708
絵踏して裔は司祭といふ家系 稲畑廣太郎 ホトトギス 200802
花魁の衣ずれ聞かむ絵踏の日 築城京 馬醉木 200804
十字架のイエスが踏絵ふめといふ 荒井千佐代 200804
音軽ろし絵踏なき世のハイヒール 栗原公子 200807
絵踏せるごとき君への誓ひかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200902
ためらひもなく絵踏せし女はも 稲岡長 ホトトギス 200906
爆心地に入りぬ絵踏をなすごとく 西川織子 馬醉木 201005
平らなる踏絵の裏も疼きたる 大地真理 201005
絵踏無き世の悲しみといふも又 稲畑廣太郎 ホトトギス 201006
マリア像の膝下に踏絵拡げられ 村上美智子 雨月 201006
猫の目の妖し踏絵のむかしより 浜福惠 風土 201105
ちぢれ毛を疑はれたる絵踏かな 三村純也 ホトトギス 201106
踏むまじき沙羅の落花の踏絵めく 荒井書子 馬醉木 201107
踏絵てふ歩むほかなしと歩む 水野恒彦 201107
潦さざなみたちて踏絵かな 大島翠木 201107
今日よりも明日を信じて絵踏かな 多田まさ子 ホトトギス 201108
転ぶとは悲しき言葉絵踏かな 多田まさ子 ホトトギス 201108
踏絵より悲し長崎殉教図 後藤比奈夫 ホトトギス 201108
額触れむばかりに拝す踏絵かな 荒井千佐代 祝婚歌 201110
十字架のイエスが踏絵ふめといふ 荒井千佐代 祝婚歌 201110
絵踏してすゑは司教か教皇か 稲畑廣太郎 ホトトギス 201202
踏絵の日どこまでも海青かりき 豊田都峰 京鹿子 201204
涙して磨耗の踏絵拝しけり 村上美智子 雨月 201205
病院に待つ間踏絵に似てゐたり 齊藤實 201305
ためらひの美しかりし絵踏かな 後藤立夫 ホトトギス 201306
汐満ち来うすくれなゐの絵踏板 山田美恵子 火星 201306
絵踏せし人の数なる汚れと見 嶋田一歩 ホトトギス 201307
もう一度戻りて隅の踏絵見る 嶋田一歩 ホトトギス 201307
素通りのできぬ踏絵の汚れ見る 嶋田一歩 ホトトギス 201307
気づかずに冬たんぽぽを踏絵とす 村田岳洋 ろんど 201403
みちのくのかくれキリシタン絵踏かな 中村洋子 風土 201405
磔像の釘跡しるき踏絵かな 大橋淳一 雨月 201406
踏絵の絵踏めとは言うてくれぬなり 柳川晋 201406
むごき世の踏絵の画像しづかにも 稲岡長 ホトトギス 201406
尖りたる波が光れる絵踏かな 高倉和子 201407
糺されて踏絵心地となりしこと 千原叡子 ホトトギス 201407
絵踏の世遠くバチカン訪れし 千原叡子 ホトトギス 201407
絵踏なき世や教皇に拝謁し 千原叡子 ホトトギス 201407
胸内に夏たしかむる踏絵持つ 有松洋子 緑光 201411
同人の司祭絵踏の世を語る 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
顔の無き踏絵の叫びありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
今の世になかりし絵踏語り継ぐ 稲畑汀子 ホトトギス 201502
我ならば絵踏の世生くすべなきと 稲畑汀子 ホトトギス 201502
踏み減りし踏絵といふを目の当り 湯川雅 ホトトギス 201505
絵踏みして荒灘の魚追ひにけり 柴田佐知子 201505
幾人の蹠を載せし踏絵かな 原田達夫 201505
踏絵小さかりし遊女の足よりも 岩田公次 ホトトギス 201506
絵踏せし古き名残の罅の板 岩田公次 ホトトギス 201506
偶像を許さぬ民の踏絵かな 柳川晋 201506
端といふもののなかりし踏絵かな 今橋眞理子 ホトトギス 201507
ぽつぺんを吹けば遥かや踏絵の世 今井千鶴子 ホトトギス 201507
なほ続く絵踏の話島の夜 山田閏子 ホトトギス 201507
真直に額に日矢射す絵踏かな 岩岡中正 ホトトギス 201508
絵踏する太夫の足の白さかな 小川龍雄 ホトトギス 201510
踏絵見て空の眩しくありにけり 小川龍雄 ホトトギス 201510
幾人の蹠をのせし踏絵かな 原田達夫 箱火鉢 201511
一枚の踏絵の疵の語るもの 稲畑廣太郎 ホトトギス 201511
絵踏するやうな都心の足取りに 稲畑廣太郎 ホトトギス 201602
一枚の踏絵の疵の語るもの 稲畑廣太郎 ホトトギス 201602
今の世に生きて絵踏の世を思ふ 稲畑汀子 ホトトギス 201602
絶対に踏まぬ絵踏といへざりし 稲畑汀子 ホトトギス 201602
絵踏の世遠し今こそ語らばや 稲畑汀子 ホトトギス 201602
天地は踏み絵に満ちてをりにけり 柳川晋 201606
靴裏に花の踏絵や二三片 山田六甲 六花 201606
沈黙のキリスト揚げ絵踏かな 東正則 末黒野 201705
天上の主の見そなはす絵踏かな 岩岡中正 ホトトギス 201707
眼鏡とり視線をはづす踏絵の目 林徹也 201707
先見えぬ踏絵の連鎖九月果つ 赤座典子 あを 201711
岩を打つ波音高く踏絵かな 岩月優美子 201805
絵踏みせし末裔島に漁りて 川田好子 風土 201805
母親の美貌が不満絵踏の日 阪野基道 船団 201809
踏絵踏むごと薄氷を踏みにけり 佐久間敏高 201905
手を打ちし釘跡残る踏絵かな 大橋淳一 雨月 201905
黒光る踏絵狐狸庵遺品なり 林いづみ 風土 201906
委ねたる生死踏絵の一枚に 永森ケイ子 ホトトギス 202008
真実を閉ざす呵責を知る踏絵 永森ケイ子 ホトトギス 202008
裁かるる心の闇を置く踏絵 永森ケイ子 ホトトギス 202008
星流る絵踏の島は孤舟めく 村田あを衣 京鹿子 202010
天草五橋絵踏のごとく渡りけり 齊藤實 202101
話題よりはじまつてゐし絵踏かな 稲畑汀子 ホトトギス 202102
踏絵せる江戸の人らを主は許す 吉川隆 春燈 202105
信仰の自由に暮し絵踏ふと 水田むつみ ホトトギス 202106
昔人の足小さからん板踏絵 湯川雅 ホトトギス 202107
美女たちも踏絵に惑ふウクライナ 七郎衛門吉保 あを 202204
足の爪切つて踏絵の島に立ち 太田良一 末黒野 202206
絵踏めく一歩の深し今朝の雪 星加鷹彦 202208
いつまでも足うらにある踏絵かな あさなが捷 202208

 

2023年2月28日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

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