春の夢 1  200句

浄春童子、 早春世を去りし

春の夢気の違はぬがうらめしい       来山

作品
作者
掲載誌
掲載年月
母と姉語るを春の夢の中
村越化石
199904
ありのまま妻には言へず春の夢
佐々木東道
199906
春の夢つゞきは明日にみたきもの
久保田一豊
いろり
199906
天冠に御朱印押さる春の夢
小林輝子
風土
199907
春の夢何万トンの空だろう
小野裕三
海程
199908
春の夢鼓動は広がり墜ちてゆく
尾上有紀子
わがまま
200002
春の夢正さ夢となる旅仕度
大平保子
いろり
200005
玉手箱忘れて来たり春の夢
棚山波朗
春耕
200006
ままならぬ一人くらしよ春の夢
大平保子
いろり
200006
春の夢たのしき最中起されて
大平保子
いろり
200006
春の夢このまゝ息の絶えてよし
久保田一豊
いろり
200006
大枚をはたいて得たる春の夢
土井田晩聖
銀化
200006
勾玉となつてしまひぬ春の夢
深澤鱶
火星
200007
春の夢父母の影追ふ畑の中
小川花久
いろり
200007
春の夢消し忘れたマニュキア
尾上有紀子
船団
200008
これは夢夢と知りつつ春の夢
二瓶洋子
六甲
200008
万華鏡覗きしばしの春の夢
岩田登世
雨月
200104
貝殻の櫂こいでゆく春の夢
鷹羽狩行
200105
臍の緒の先思ひ出す春の夢
水口佳子
銀化
200105
二枚舌使ふロボット春の夢
松山律子
六花
200203
春の夢亡き猫屋根の上にゐて
勝田みつ子
200205
かづら橋春の夢にや渡るべし
大橋敦子
雨月
200206
また同じ小径に逸れし春の夢
邑沙綺
銀化
200206
白毫の覚めてなかりし春の夢
鷹羽狩行
200207
ふりむかぬ人あまたゐて春の夢
長谷川守可
百鳥
200207
ガウデイの教会近し春の夢
岩月優美子
200207
亡き人を追うて汗しぬ春の夢
金田きみ子
200207
逝く春の夢の子細に及びけり
橋本榮治
馬醉木
200304
春の夢利き足で出る墓の穴
佐藤喜孝
あを
200304
亡き人の幾人も居し春の夢
田中藤穂
あを
200304
春の夢深水の絵の中にゐる
須佐薫子
帆船
200304
傘寿来ば春夢捨てりと膝打たむ 荻野千枝 京鹿子 200305
春の夢さめ鳥籠に鳥をらず
今村恵子
200305
いつの間にペガサスに乗る春の夢
岩月優美子
200306
身に深く卵を抱く春の夢
祐森彌香
遠嶺
200306
札幌の支局へ行けと春の夢
中上照代
火星
200307
かえりみる九十四年春の夢
長谷川登美
ぐろっけ
200404
春の夢父母在はす黄泉のくに
福谷三保子
帆船
200405
夜半覚めてなぜか気になる春の夢
北島上巳
酸漿
200405
マーカーを持ちて車内の春の夢
赤座典子
あを
200405
春の夢八割がたを自析せり
高橋道子
200405
しばらくはたどりてありし春の夢
蓮尾あきら
風土
200405
春の夢泡より生れしネプチューン
工藤進
200406
春の夢独逸国籍取得可能
吉弘恭子
あを
200406
春の夢イラクの孤児に抱きつかれ
星加克己
ぐろっけ
200406
夢声が居の残像春の夢となむ
大橋敦子
雨月
200407
春の夢「おほむらさき」に乗る私
山中宏子
200407
その先の見たくありしが春の夢
橘澄男
『山景』
200408
春の夢象の連隊待つ砦
山本浪子
風土
200501
春の夢わが坐る石さがしをり
安嶋都峯
対岸
200502
稚魚となり川藻にあそぶ春の夢
門脇なづな
対岸
200505
覚めきらず眠れず春の夢のあと
山田美恵子
火星
200505
春の夢もがいても詩は生まれない
浜田久美子
六花
200505
石積むに疲れて覚めて春の夢
岡本眸
200505
一人より二人がいいと春の夢
安部里子
あを
200505
春の夢ゆめと思はず見てをりぬ
石川英利
百鳥
200506
きれぎれに長々と見し春の夢
村越化石
200506
孫娘にシャルウイダンス春の夢
楯野正雄
200507
寝返りを打てばはらりと春の夢
村田菊子
遠嶺
200507
春の夢われ蕉翁になりにけり
斉藤道正
遠嶺
200507
逢ふひとの誰も声なき春の夢
奥澤和子
200508
稚魚となり川藻にあそぶ春の夢
門脇なづな
対岸
200602
春の夢なんと未婚の我が居て
北川英子
200605
春の夢この巻貝の奥にかな
近藤喜子
200606
眼の前に布達拉ポタラの迫る春の夢
岩月優美子
200606
壺の底叩いて春の夢覚ます
宮澤さくら
遠嶺
200606
春の夢覚めて諾ふ船の揺れ
徳丸峻二
風土
200606
何もかも上手くいきたる春の夢
高倉和子
200606
シャガールの馬に相乗る春の夢
岸田爾子
200607
モノクロに色つけてゆく春の夢
安部里子
あを
200607
生者より死者の鮮やか春の夢
金子美津子
200706
春の夢またまた追試くらひけり
水原春郎
馬醉木
200706
老いたれば過去美しき春の夢
金田きみ子
200706
三国志の漢出て来る春の夢
勝見玲子
200707
昼も夜も無き二人なり春の夢
ことり
六花
200803
鳴り響く鐘の音春の夢に浸む
ことり
六花
200803
繰り言のるると続きて春の夢
高倉和子
200803
霊夢ともならずに覚めて春の夢
大畑善昭
200805
出口なき夢に覺めをり春の雪
加藤富美子
200805
哲学の道を相傘春の夢
西村純代
200806
春の夢鳩サブレーの抱卵す
森岡正作
200806
四不像を馭すや天ゆく春の夢
後藤眞由美
春燈
200806
ちんどん屋吾れが笛吹く春の夢
定梶じょう
あを
200806
最後まで顔のわからず春の夢
高倉和子
200806
気がかりの一事に春の夢のこと
野路斉子
200806
ラスベガスにての豪遊春の夢
峰尾秀之
200807
玉手箱まだ開けずゐる春の夢
鷹羽狩行
200904
始祖鳥に付き纏はるる春の夢
塩路隆子
200905
同じ道辿つてをりぬ春の夢
新井いづみ
炎環
200905
春の夢一句未完のまま目覚む
高木みさ女
炎環
200905
濡縁の一枚ゆるぶ春の夢
佐藤喜孝
あを
200905
春の夢覚め鉛筆を削りをり
佐々木秀子
200906
春の夢とどこほりなく見て忘る
高橋道子
200906
たかぞらの風の音色や春の夢
鈴木直充
春燈
200906

 金子美津子『春の夢』序句

色ありとせば金色の春の夢

鷹羽狩行
200909
菜を刻む音に覚めたる春の夢
山田六甲
六花
201004
エジソンの爪の垢欲し春の夢
中島玉五郎
201005
ゑひもせずなどとつぶやき春の夢
鷹羽狩行
201005
富士山にブラックホール春の夢
石脇みはる
201005
春の夢覚めてチーター失速す
矢口笑子
春燈
201005
何もかも片付いてゐる春の夢
高倉和子
201005
身の内の我鬼と目の合ふ春の夢
木村傘休
春燈
201006
ありさうな結末となる春の夢
鈴木てるみ
ぐろっけ
201006
地図を手にまだうろうろと春の夢
赤座典子
あを
201006
南京は北京の南春の夢
小堀寛
京鹿子
201007
春の夢泣き通す恋置いてきし
高倉和子
201007
みんな居てみんな仲良し春の夢
柴田志津子
201007
選ばれて困つてしまふ春の夢
矢野百合子
201007
春の夢消えゆく父の手が温し
宮井知英
201007
髪赤くメッシュに染めし春の夢
新江たか
ろんど
201008
運河行く豪華客船春の夢
小澤克己
遠嶺
201008
青春の夢ひきずりぬ後の月
渡辺安酔
201012
春の夢黒縁眼鏡かけしまま
常田創
201104
この先は入る可からず春の夢
田中藤穂
あを
201104
いとほしや地震に摘まれし春の夢
伊藤憲子
201105
合格のだるまに両目春の夢
秦和子
201105
一筆に描く花文字春の夢
近藤幸三郎
風土
201105
生と死の親しき往き来春の夢
中野英伴
春燈
201105
春の夢さめて遠くへ行きし人
舩越美喜
京鹿子
201105
春の夢余生にもある密かごと
大村美知子
京鹿子
201105
現世の端に水脈曳く春の夢
森岡正作
201105
春の夢何か一芸あらまほし
林哲夫
ぐろっけ
201105
百回も母を呼びたる春の夢
高倉和子
201105
なつかしき人次々と春の夢
小林正史
201106
亡き母が妻の座にあり春の夢
堀志皋
火星
201106
シャガールの宙に浮かるる春の夢
岩月優美子
201106
春の夢根刮ぎ渫ふ大津波
林美智
ぐろっけ
201106
春の夢彼岸此岸を行き戻り
宮井知英
201107
五番街を闊歩せし日も春の夢
西村純代
201107
気持ち良く騙されてをり春の夢
矢口笑子
春燈
201107
五十年の人生絵巻春の夢
松本信子
かさね
201204
春の夢大切なこと言はぬまま 高倉和子 201205
春の夢にもハッカーが侵入す 高橋将夫 201205
踏み切りの音は目覚まし春の夢 金田和代 かさね 201206
法螺貝や馬鹿や春夢のわたつうみ 大島翠木 201206
食べるのに専念したる春の夢 小林正史 201205
春の夢神通力で故郷片す 覚本秀子 ろんど 201206
シャガールと風を舞ふなり春の夢 飯田美千子 201207
補聴器をつけぬ不思議な春の夢 中下澄江 201207
父に会ひ母に会へざる春の夢 福島せいぎ 万象 201207
使ひ分けするペンネーム春の夢 平田恵美子 ぐろっけ 201207
春の夢マリア観音現れ給ふ 沢木欣一 万象 201209
亡き師より励まされたる春の夢 小野喬樹 馬醉木 201305
春の夢亡き人いつも物言はず 大嶋洋子 春燈 201306
平安の牛車の君に春の夢 佐藤喜仙 かさね 201306
春の夢わが深層の現るる 近藤喜子 201306
目を覚ます魚板が春の夢を吐く 柳川晋 201306
ロボットに看取られてゐる春の夢 木村ふく 馬醉木 201307
春の夢あの世よりひと逢ひに来て 原田小芝 春燈 201403
百歳にてギネスブックや春の夢 中貞子 201404
我走り母は歩くと春の夢 赤座典子 あを 201405
夫と踊るラストダンスや春の夢 辻知代子 201405
鼻痒し未完のままの春の夢 山田六甲 六花 201405

 辞世

泥舟のすーいすーいと春の夢

山田六甲 六花 201405
フロイトの深き眠りの春の夢 高橋将夫 201405
惜命の杖賜はりし春の夢 中島芳郎 201406
春の夢覚めてつじつま合はせたる 阪本哲弘 201406
春の夢一遍炎の中に舞ふ 二宮一知 万象 201406
脈絡のつかぬままなる春の夢 塩路五郎 201406
物言はぬ父と遊びし春の夢 福島せいぎ 万象 201406
根の国の闇にさまよふ春の夢 原田しずえ 万象 201406
潮騒に目覚む未完の春の夢 塩見英子 雨月 201407
ラムネ抜くわが青春の夢幻たり 北川孝子 京鹿子 201409
春の夢どこかで「おい」と呼ばれしか 木村ふく 馬醉木 201501
春泥に夫の手を借る春の夢 大橋伊佐子 末黒野 201505
而して宇宙遊泳春の夢 千田敬 201505
寝返れば宇宙まで行く春の夢 宮内とし子 201505
家族みな揃ひてゐたる春の夢 高倉和子 201505
貝合はせの姫も殿御も春の夢 志方章子 六花 201506
笑みもたらし後は雨音春の夢 吉村さよ子 春燈 201506
初恋のみのりてゐたる春の夢 白水良子 201506
母スマホ胸の児眠り春の夢 神田惣介 京鹿子 201507
春の夢獏にくはれてしまひけり 島野ひさ 万象 201507
春の夢くすりの音をきいていた 林田麻裕 201603
海底に引き込まれたる春の夢 宮内とし子 201605
隊商に加はり春の夢を行く 柴田佐知子 201605
出口なき闇に迷ひし春の夢 森田尚宏 201605
春の夢光源氏の腕の中 木村梨花 春燈 201605
春の夢トロイの木馬凛と立つ 岩月優美子 201605
春の夢野望の焔消へにけり 前田美恵子 201606
レポートの提出焦る春の夢 岩井京子 201606
切れぎれに同じ顔見る春の夢 田中涼平 201606
春の夢寝返りうつて壊しけり 諸戸せつ子 春燈 201606
春の夢あけてもみたき玉手箱 コ田千鶴子 馬醉木 201606
覚めてよりざわつきし胸春の夢 山口ひろよ 201607
春の夢けいじ器師桂郎師 森屋慶基 風土 201607
夢なりと思ひつつ見る春の夢 高橋将夫 201705
一線を越えずに終はる春の夢 高橋将夫 201705
春の夢醒めたる朝(あした)からが春 柳川晋 201705
春の夢カンパネルラと星巡り 今村千年 末黒野 201707
玄室に貴婦人出でし春の夢 横田敬子 201708
縁側に父ははの居る春の夢 高倉和子 201708
パソコンに保存しておく春の夢 高橋将夫 201805
大亀に跨りゆける春の夢 平子公一 馬醉木 201805
久に逢ふ亡夫嬉しや春の夢 小菅礼子 春燈 201805
春の夢風狂人に名を連ね 森岡正作 201805
酒やめようか詩を止めようか春の夢 千田百里 201805
春の夢 →2      

 

2021年4月30日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。